副看護部長 新居田 敦子 専門誌『臨床麻酔』に「特定行為研修に基づくPICC挿入教育と臨床実践」を執筆しました

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副看護部長 新居田 敦子 専門誌『臨床麻酔』に「特定行為研修に基づくPICC挿入教育と臨床実践」を執筆しました

挑戦する看護師を育てる~特定行為研修とPICC挿入教育が描く未来~

副看護部長 新居田 敦子

専門誌『臨床麻酔』に「特定行為研修に基づくPICC挿入教育と臨床実践」を執筆した副看護部長・新居田敦子。当院では、特定行為研修を修了した看護師によるPICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)挿入を積極的に推進し、患者さんへのより安全で迅速な医療提供と、看護師の専門性向上の両立に取り組んでいます。

今回は、論文執筆の背景や教育への想い、そしてこれからの看護の未来について話を聞きました。

「全国の医療現場に伝えたい」論文執筆の背景

――今回、『臨床麻酔』へ執筆された背景を教えてください。

もともと、『臨床麻酔』の編集委員を務める麻酔科医師と、輸液カテーテル管理に関する活動を一緒に行っていました。学会発表や日本VADコンソーシアムでの活動を通じて交流があり、そのご縁から執筆のお声がけをいただきました。

私自身、日本VADコンソーシアムが編集した『輸液カテーテル管理の実践基準』ではコアメンバーとして編集・調整にも携わっています。多くの専門家の知見を集約し、一冊の基準書としてまとめ上げる経験は、非常に貴重なものでした。

今回の論文では、当院が取り組んできたPICC挿入教育や運用体制、そして臨床実践で得られた経験を広く共有することで、全国の医療現場の参考になればという思いで執筆しました。

患者さんを待たせない。そのために看護師ができること

――当院では、なぜ特定看護師によるPICC挿入に取り組んでいるのでしょうか。

一番の目的は、患者さんに必要な治療を、必要なタイミングで提供することです。

以前はPICC挿入を医師のみが担当していました。しかし、医師は診療や手術など多くの業務を抱えているため、「早く挿入してあげたい患者さんがいるのに待っていただく」という場面も少なくありませんでした。

2015年の制度改正により、特定行為研修を修了した看護師もPICC挿入が可能となり、私は2017年に研修を修了しました。当院ではその先駆けとして体制づくりを進め、現在では11名の特定看護師が活躍しています。

特定行為はPICC挿入だけではありません。「直接動脈穿刺による採血」、「創部ドレーンの抜去」など21区分38行為があり、高度な知識と判断力を持った看護師を育成する制度です。

当院では、所属部署においてリーダーシップを発揮しOJTを実践できる者として、看護部として推薦を受けた看護師が研修に参加しています。単に資格取得を目指すのではなく、「患者さんのために何ができるか」を考えられる人材を育てることを大切にしています。

「技術」よりも大切なのは「判断する力」

――教育で最も大切にしていることは何ですか。

PICCは患者さんにとって非常に有用なデバイスですが、当然ながらリスクも伴います。

だからこそ、私たちは技術だけを教えることはしません。

シミュレーションを何度も繰り返し、適応の判断から挿入、管理、抜去まで一連の流れを学びます。そして、「危険だと思ったら実施しない」という判断ができることを何より重視しています。

実は、技術以上に重要なのは“判断力”なのです。

また、当院では放射線技師とも密接に連携しています。透視室の空き時間を活用し、技師と特定看護師が協力して実施できる体制を整えています。特定看護師の勤務状況も可視化し、緊急時にも対応できるフローを構築しています。

こうした仕組みづくりも、安全な医療には欠かせません。

教育体制そのものが、当院の強み

――当院の教育体制にはどのような特徴がありますか。

ありがたいことに、現在では他院から研修の依頼をいただくこともあります。同法人の施設から症例経験のために研修へ来られることもありますし、講演の依頼をいただく機会も増えました。

PICC挿入は年間約500件を実施しており、一定の症例数を経験できることも当院の大きな特徴です。

研修を終えた特定看護師については、1年間伴走する担当指導者を定め、技術だけでなく判断や考え方まで含めて継続的に支援しています。 また PICC 挿入については、最初の20例までは担当指導者が必ず同席し、実施をともに行いながら自立に向けた支援を行います。

資格を取得したら終わりではありません。

安心して実践できるまで支えることも教育だと思っています。

特定行為研修は「ゴール」ではなく「スタート」

――これから当院はどのような看護を目指しますか。

特定行為研修は資格取得が目的ではありません。

学んだ知識や技術を現場で活かし、周囲へ広げていくことが大切です。

例えば、急変を予測して対応するRRTRapid Response Team)の活動や、各部署での教育など、特定看護師が活躍できる場は数多くあります。

研修を受けても実践する機会が少ない施設もありますが、当院では実践できる環境があります。

だからこそ、「この病院なら将来の看護師像を描ける」と思ってもらえるような組織でありたいですね。

将来的には、各部署に2名程度の特定看護師を配置することを目標としています。

法人の支援制度を活用すれば、働きながら研修を受けることもできます。研修期間中も実習時間が確保されるなど、安心して学べる環境を整えています。

「人を育てる」とは、組織文化を育てること

――最後に、特定行為研修を目指す看護師へメッセージをお願いします。

特定行為研修では、技術だけではなく、臨床推論という「医師がどのように診断し、判断しているか」というプロセスも学びます。

その学びによって、看護師としての視野が広がり、チーム医療の中でより主体的に患者さんへ関われるようになります。

私が育てたいのは、技術者ではありません。

学んだことを現場で実践し、その知識や経験を次の世代へ伝えられる看護師です。

教育とは、単に技術を教えることではなく、組織文化を育てること。

一人の成長が、患者さんへのより良い医療につながり、その積み重ねが病院全体の力になります。

これからも挑戦する看護師を育て、地域の皆さまにより安全で質の高い医療を届けられる病院であり続けたいと思います。

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